
昔と 言いましても 昭和の時代のことです 今の飽食の時代では 考えられませんが サツマイモの蔓を食べて ヒモジサをしのいだことがありました。
サツマイモの蔓は 梅雨が明けると猛烈な勢いで伸びます 芽を摘めば摘むほど 更に 蔓ははびこります。
この蔓のお陰で 命を救われたこともありました。
それは もう数日で 戦争が終わる 暑い夏の日でした。 疎開先の淡路島で 曲がりくねった海岸沿いの道を 木炭を燃料にした乗合バスが 煙を吐きながら走っていました。 突然 猛烈な爆音と同時に カチカチカチと機銃掃射の音がすぐ近くで聞こえました。 日本の近海まで接近した空母から飛び立った あのグラマン艦載機 一機に狙われていたのです。
一回目の攻撃の後 グラマンは 一旦 姿を消しました。 バスは大木の陰に急停車して 我々乗客10人程は急いでバスを降り 必死に走って グラマンに目を付けられている銀色車体のバスから遠ざかり 身を隠す物陰を探しました。
間もなく 空中で 反転したグラマンの爆音が 再び聞こえて来ました。 周りは 物陰一つなく ただ なだらかに海の向かって傾斜したサツマイモ畑が続くばかりです。 夏の太陽は照り付け サツマイモの葉はピカピカ光って サツマイモ畑は静かな海面の様です。
咄嗟に 乗客達は バラバラに散らばって イモ畑の畝の間に身を伏せ 耳を両掌で押さえ 目を瞑って 無心で待ちました。
後で知った事ですが グラマンF4F戦闘機のニックネームはWildcatです 野良猫の叫び声さながら 恐ろしい急降下爆音と同時に 機銃掃射音が聞こえ そして過ぎました。 後には あの夏のけだるさだけが残りました。
この第2回の急降下で グラマンの操縦者は サツマイモの蔓の陰の我々を 見つけることが出来なかったのです。
さて この春 隣の畑の一畝に サツマイモが芽挿しされました。
そのそばには ナスやトマト等の夏野菜が植えられています。 芽挿しした方は 当初から支柱を建ててネットを張り 蔓を絡ませる 所謂 サツマイモの空中栽培の設計図を お持ちのようでした。
最近 狭い農園では 小さいカボチャや 小玉西瓜の空中栽培が流行っていますが サツマイモの空中栽培は 始めて見ました。 胡瓜の様にヒゲ蔓を持たないサツマイモにとって ネット登りは得意でありませんが それでも 写真でご覧の通り 返された蔓は手助けを得ながら ネットをよじ登っています。
こうすることで 葉は一日中夏の太陽を受け 土の中では サツマイモが太っていることでしょう。

暑い真昼時に銀座で所用があり 涼しい地下鉄を乗り継いで出かけました。
銀座松屋デパートで 熊田千佳慕展が開かれていたので 見て来ました。 おりから夏休みも追い込みに入り 小さなお子さん連れの方々で 大変な盛況でした。
会場では 花や野菜 昆虫や絵本など 数多くの細密画を見せていただきました。 その中に 8月7日付けの このブログでアップしました 胡瓜の雌花が そっくりの姿で描かれているのを見つけました。
今回の熊田展は 99歳の白寿展として 8月12日から8月24日まで開催されますが 熊田さんは 開会の翌日 8月13日に 急逝されました。
ご冥福を お祈り申し上げます。