
年の瀬も迫りました。 今日は野菜と関係のない木像の話題です。
最近アナン国連事務総長交代のニュースが新聞・テレビで報道されています。
アナン氏は 2期・11年間 第7代の国連事務総長として活躍され 今年一杯で交代されます。 その間ノーベル平和賞も受賞されました。 アナン氏はこの木像と同じガーナのアシャンティ出身者です。
アシャンティはガーナの中央部に位置する地方の名で 18世紀にはアシャンティ王国として栄えた地方です。 ガーナが英国に植民地化される時に 最後まで抵抗したのがアシャンティ王国で そこに住んでいる人はアシャンティ族が中心です。 彼らは勇敢で高いプライドを持ち 彼らの文化を今に伝えています。 首都クマシには博物館・文化センター等が残っています またアフリカの織物の中でも有名なケンテクロスはアシャンティの王侯貴族の為に織られた鮮やかな色と柄の布です。 アシャンティ族の人々は皮膚の色も薄く 体格も海岸地方に住んでいる人達ほど大柄ではありません 特に女性は小柄で目鼻立ちの整った美人が印象的です。
37年も昔 1969年の雨季が明けた10月に西アフリカのギニアに入り その後ガーナに移動して 合わせて約1ヶ月半を西アフリカで過ごしました。 滞在の目的はアルミニューム原料のボーキサイト鉱床の調査でした。
ボーキサイト鉱床は薄い表土層で覆われ 背丈ほどの草が一面に生えた草原のサバンナ地帯です。 小川で区切られた一つの台地は ジープで1時間走っても横断し切れないアンツーカー色の赤土で「プラトー」と言われています その「プラトー」が無限に連なった大平原です。
日本を出る時には「猛獣に襲われはしないか?」と心配していましたが 猛獣は1度もお目にかかりませんでした。 現地で何よりも恐れられていたのは「ツェツェ蝿?」と呼ばれている大型のアブでした。 暑い炎天下の草原をジープは幌を張って走ります 一匹でもそのアブが車内に紛れ込むと ただちに停車して大男が全員で一匹のアブ退治をする滑稽な光景を繰り返しました。
想えば 珍しいもの 楽しかった事 美味しかった物 等々限がありませんが 長年が経った今でも比較的鮮明に残っている この西アフリカでの1ヶ月半でした。
さて鉱床調査最後の宿泊地クマシでは 欧風のまともなホテルに5日ほど寝泊り出来ました。
このホテルのエントランスの両側に 来訪者を出迎えるかのごとく数体づつの木像が並んでいます ホテルの係員の一応の説明では この像はアシャンティの謂れある像だとのことでした。
この木像を眺めているうちに 非売品で買うことは無理だろうと思いつつも 一番小さい像でもいいから手に入らないかとの思いが膨らんで来ました。 当時は外貨の持ち出しが厳しい時代で その上 ガーナでは為替レートに数倍の闇レートがあった時でホテル代が非常に高く 懐具合に余裕がありませんでした。 財布の中を見ながら ホテルと何回もの交渉を重ね やっとUSドル決済でこのアシャンティの木像を手に入れることが出来ました。
最後の難問は どうして日本へ送るか?でした。 像の背丈は80cm足らず 重量は南方木材で出来ているので見掛によらず軽く3kgほどです。 そこで徒に梱包などしないで下げて帰った方が安全だろうとの結論になりました。
羽田空港に辿り着くまで何度も飛行機を乗り降りする度に 座席には持ち込めないので 乗務員と個別交渉をしました。 座席の窓からスチュヮデスのお嬢さんが大事に木像を抱っこして運んで下さっている姿を見てほっとしたこともありました。
年の暮れの煤払いに 久し振りで像を青空の下に持ち出しました 今年はアナン氏に因んでこの写真を撮りました。